遺跡めぐり （1）

　四街道市吉岡の城郭群と落武者伝説の村―佐倉古道をたずねて　　

▲御成台公園前	▲子和清水跡（前方かなた） 　各地で聞かれる「親が飲むと旨酒、子にはただの清水」という伝説がここにもあったらしい（『印旛郡誌』）。吉岡の名水ということであったが、地元の方にお聞きしたところでは、底なし沼で、子供のときは怖くていけないようなところだったいう。現在は造成されたうえに調整池が作られて、昔の面影はない。栗原東洋1979によれば、文政八年十二月に花沢伝左衛門が建立した「水神宮」の石柱があったというが、今はどこにあるのだろうか。
▲字「矢治塚」 　やじづか。これから向かう木出城は、焼け落ち、焼け残ったやじりをここの「矢治塚」に埋めたという伝承がある。そこから人骨も出土したという（栗原東洋1979）。木出城云々の部分は、伝説としては面白いが、、やじりを副葬品として伴う古墳時代の古墳があり、それを後世の人が近くにある木出城に付会してできた話しではないだろうか。地元の人にたずねたところ、自分が子供のころにはすでに「矢治塚」というような塚はなかった、ということである。ともかくこの字名は残してほしいものである。	▲木出城へ 　左背後の森が木出城主郭。地元では「本所山」と呼ばれている。ここに「ゆうがいうさぶろうがはびこっていた」という伝承がある（相川日出男1983）。「ゆうがい」とは千葉ではよく聞く要害のなまった言い方であろう。「うさぶろう」とはどういう人物だろうか。「はびこる」とは凄い表現である。年を経るうちに、村人たちにより山賊の親玉のように記憶されていったのか。聞きようによってはユーモラスでもあるが。
▲「正和元年」（1312年）の紀年銘のある板碑を拝見する。 　屋号「ゆうがいんち」（「要害の内」あるいは「要害の地」か？）のお宅には城内から出土した板碑がいくつか保管されている。四街道市を代表する板碑である。 　木出城との関連でいうと、木出城の最終形態は、戦国期のものだろうが、鎌倉時代からこの付近の在地領主の館として存続し、戦国期に改築され張出しなどの技巧が施された、という可能性が考えられる。もともと木出城の対岸に村の中心があったが、木出城の火災を機に、「郷中」（ごうなか）（大作、東の内、内山、下タ、下田山など福星寺寄りの地区）に村人たちが転居した、という伝承と重ね合わせることができるかもしれない。	▲右が「正和元年」の板碑。緑泥片岩製の武蔵型板碑である。 　かつて千葉県文化財保護協会の渡辺太助氏が木出城を調査しに訪れた際に、牛小屋のところで発見したエピソードが伝わっている。
▲木出城２郭（手前の畑） 　北方向を見ている。前方の森が主郭。南東（右手前）にも土塁跡とも見える凹凸があるが、北西（左前方）の土塁と空堀跡が比較的はっきりしている。このほかさらに南側の神社、民家にも切通しや土塁状の造成などが見られ、木出城関連の遺構である可能性がある。
▲2郭北西の土塁と空堀 　規模は主郭より小さい。	▲いよいよ主郭へ 掘底道に降り、そこから写真前方左奥の虎口（入口）へと入る。
▲木出城の虎口前 虎口（こぐち）とは、城の出入口のことである。城攻めの際には、激しい戦闘が行われる場所であり、守りのためにいろいろな工夫が凝らされる。	▲主郭内部から見た虎口
▲虎口左わきの横矢突出部の上から城兵が狙っていた！！ 　木出城の場合、虎口の左側の土塁に突出部（横矢）が設けられている。木出城の見所のひとつだ。　「こんなによく残っているところは他に見たことがない」などと城マニアの参加者から感嘆の声が漏れた。	▲横矢突出部の土塁上から虎口前をみた映像 　たかしpart3氏によれば、城攻めの兵が虎口（写真左方）に向かって矢を射ようと構えるとすると、右利きなら、横矢の土塁上の守備兵に背中を見せることになる。守備兵は、その背中を狙い撃ちにすることができるのである。
	To be continued
▲虎口から主郭へ	▲つづく
一部、たかしpart3さん、yygucciさんそれぞれの提供の写真を使用させてもらっています。 現地で解説役を果たしたたかしpart3さんの木出城のページも御覧ください。 相川日出男1983 『地区探訪』四街道市役所刊。 栗原東洋1979　『四街道町史（社寺史)』四街道町役場刊。 栗原東洋1975　『四街道町史（第一部・通史編）』四街道町役場刊。

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