2006年 9月24日(日) 於:桜木公民館

鈴木 正博(早稲田大学先史考古学研究所)

【市民の、市民による、市民のための貝塚学再構築】

千葉の貝塚研究今昔 (第5回):花輪貝塚が語る環境変遷史

 

1.序−「遺跡を歩く」という考古学の構え−

【「遺跡を歩く」入門編】  ◎知識の整理と遺蹟・遺物の体感が、考古学を知る第一歩!

【「遺跡を歩く」基礎編】  ◎知識の整理に加えて方法の訓練が、考古学を学ぶ第一歩!

<【入門編】に至る学問的背景の理解>

【「遺跡を歩く】実践編】  ◎個別の目的と方法の適用による問題解決が、考古学を実践する第一歩!

<【入門編】や【基礎編】の知識は全体のごく一部であり、研究領域の多様性を追求>

【「遺跡を歩く」研究編】  ◎課題認識とその解明方法構築が、考古学を研究する第一歩!

<【実践編】の研究領域を検証・深耕し、研究の将来性を展望>

1−1.貝塚研究の歴史から、「遺跡を歩く」という考古学を見つめ直す

【「遺跡を歩く」入門編】 1.モース以前と以後、その後の人類学 

2.先史文化と貝塚の層序

<学習できるテーマ>  3.先史地理と貝塚の形成環境   ←東京湾の環境変遷史を理解する!

<今回の中心テーマ> 4.先史集落と貝塚の形成プロセス ←花輪貝塚の集落形成を分析する!

<今回の中心テーマ> 5.先史経済と生態の相互作用としての貝塚文化←千葉市の貝塚群を分析する!

1−2.貝塚研究の体験から、「遺跡を歩く」という考古学の意義を考える

【「遺跡を歩く」基礎編】 1.不備の認識:聞き取り調査などによる新たな発見と欠落している情報の認識

2.方法の習得:具体的な比較研究による自己の位置付けと新たな視点の形成

1−3.貝塚研究の現状から、「遺跡を歩く」という考古学の重要性を再認識する

【「遺跡を歩く】実践編】 1.多様化細分化された研究をアナログとして可視化統合するための研究基盤

2.神尾明正からの贈り物:  “Study nature! Not books!

1−4.貝塚研究の展望から、「遺跡を歩く」という考古学の社会への貢献を実践する

【「遺跡を歩く」研究編】 1.CRM(文化遺産を活用した地域経営)の推進:遺跡の考察から地域の研究へ

2.パブリック・アーケオロジーの確立:単眼(専門馬鹿)から複眼(多様性共存)へ

 

2006年 9月24日(日) 於:千葉市桜木公民館

鈴木 正博(早稲田大学先史考古学研究所)

2.花輪貝塚が語る環境変遷史―後期前葉のみ形成される斜面貝塚の意義―

  2−1.千葉市花輪貝塚の発掘調査報告書に接して【環境変遷史:資料5-19・資料5-20参照

    【報告書】『千葉市花輪貝塚―平成15年度確認調査報告―』(2006)、千葉市教育委員会・(財)千葉市教育振興財団

    (1)花輪貝塚の特徴  【(1)(2)についての具体的特徴は資料5-1から資料5-18を参照して導出可能)

@「堀之内1・2式」に限定した斜面貝塚。「堀之内1式」には居住区画を意識した地点貝塚も形成される。

A古都湾谷流域の斜面貝塚は職住接近型自然集落」。「計画集落」は谷奥の拠点集落として長期形成

・そこに中期末葉の貝塚凋落を踏まえた、後期前葉における環境好転現象を読み取ることが可能。

         ・古村田湾谷の有吉北貝塚にも、中期の貝層が中断してから再び後期前葉斜面貝層あり!

         ・斜面貝塚の地域には斜面貝塚と地点貝塚の両面を有する形態も顕著で、花輪貝塚と共通した形態。

          古村田湾谷では居住空間設計に地点貝塚を利用した典型は小金沢貝塚。「両面貝塚」と呼称。

 (2)縄文時代後期前葉から中葉にかけての土地利用グリッドで検出された土器による判断:除・前期〜中期

    ★資料5-1に各グリッド出土「土器型式」をマッピングすると、花輪貝塚における土地利用状況が判明する。   

 <凡例> ○:「堀ノ内1式」、 ◎:「堀ノ内2式」、 ●:「加曾利B1式」

・【B−5:○多】、【B−6:○多・◎】、【B−7:】   ・【C−7:】   ・【D−4:○・◎多・●】

        ・【E−7:●】   ・【F−4:○多・◎】、【F−5:○・◎多】、【F−6:○・◎・●】、【F−7:◎・●】

・【H−6:●?】   ・【I−3:○多・◎】、【I−6:晩期後葉「大洞A式」古式並行】

・【J−4:○・◎】、【J−5:◎多・●】、【J−12:○多・◎】、【J−6:○多・◎・●多】、【J−7:●?】、

【J−13(K−13の誤り?):】   ・【K−7:●】、【K−10:○多・◎】

・【L−6:○多・◎:住居址内に人骨】、【L−7:○・◎】、【L−9:○多・◎:最下層は前期後半

【L−8:●】   ・【M−7:】   ・【M−11(H−11の誤り?):○少・◎多・晩期底部?】

    (3)労働様式と生業の状況【園生貝塚など後晩期「計画集落」との大きな違いは漁労文化の習熟度

       @労働様式の状況(グリッド出土が多く、年代の絞り込みが大雑把!)

石器(前期・中期などを含む) : 両極石器6点(黒曜石3点、チャート3点)、石核1点(チャート)

2次加工のある石器1点(黒曜石)、打製石斧7点、磨製石斧1点

石皿5点、磨石11点、凹石4点、敲石5点、砥石2点、軽石3点

         土製品               : 土器片錘(「阿玉台式」) 6点 、土製円盤 3点

         ・貝製品・骨角器          : 殻長6.5cmのハマグリ製貝刃(J−12の住居址) 1点 

鹿角 4点(内2点はF−4で1例に切断痕)

       A生業の状況(市原市埋蔵文化財センター鶴岡英一報告を参考に先史考古学の方法で動態を分析。)

         ・分析対象グリッド:「堀之内1式」中心の貝層【B5・K10】 → 「堀之内2式」中心の貝層【J5

         ・貝類相:イボキサゴ・ハマグリ・アサリ・シオフキを中核とする海で採集できる種々な貝類。

          ハマグリの殻長平均値は約3.4cm。矢作貝塚約3.5cm、木戸作貝塚約3.4cmと共通した大きさ。

          【J5】の特徴イボキサゴ割合少ない。多い二枚貝の割合はハマグリ少なく、大きなアサリ多い。

             貝層は「貝殻破砕率(=同定貝殻重量/貝殻総重量)」が高い(他の30%に対し50%〜70%)。

          【K10】の特徴:イボキサゴとハマグリの割合多いが、カワニナ(淡水産)やヤマトシジミ(汽水産)含む。

          貝類相の変遷は、【K10】→【B5】→【J5】 と推定されるが、土器ではどうか?資料の精査が望まれる。   

         ・魚類相:全体として少量の検出。中型のクロダイ、小型のマイワシ・キス・サヨリが相対的に多く、中型

のスズキ、小型のフグ・マアジ・ハゼが相対的に少ない。土器片錘や骨角器が検出されないことと相関。

         ・哺乳類相:全体として少量。最小個体数は、シカ1個体、イノシシ2個体のみ。      

2−2.漁撈民の系統をめぐる先史考古学【後期前葉のみ形成される斜面貝塚の意義】 

    (1)漁撈文化の伝統 : 千葉市における縄文時代中期の貝塚は土器片錘による網漁と貝刃が主体。

                    後期前葉のみ形成される斜面貝塚に中期の漁労文化の伝統が顕著に見られるか?

    (2)漁撈文化の断絶 : 古都湾谷における中期後葉の貝塚群から後期前葉の貝塚群への変遷は、漁撈文化

としての労働様式の断絶が顕著。後期前葉斜面貝塚では集団関係に系統的な再編成が措定。 以 上          

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