2007−8−26(日) 於:東大能研・三室教室

参加各位                                           「馬場小室山遺跡研究会」事務局

馬場小室山遺跡研究会」第28回ワークショップ

パブリック・アーケオロジーの極意 : 「遺跡のサイエンスとアート、そして未来へのマネジメント」】

(馬場小室山遺跡を中核とした「見沼文化」と パブリック・アーケオロジー2008 の土台構築)

1.【マネジメント】第4回『馬場小室山遺跡に学ぶ市民フォーラムー「見沼文化」と漆工芸ー』の検討

1-1.【学習と検討】:「土器作り」から観た馬場小室山遺跡の集落復元

・加曾利貝塚博物館(当時)の庄司克氏による「「縄文」土器を焼く(道具としての再現)」『週刊朝日百科33 日本の歴史』通巻564号(2003)を参考に、集落における「土器作り」の体制を検討する。

  ・特に重要な検討課題は「土器作り」の視点から観た「土器の分類」であり、類型別分業や形態別分業、そして工程別分業、究極的には「土器を作らない集落」の存否へと接近することになる。

1-2.【学習と検討】:「漆の乾燥」から観た「見沼文化」―所謂「沖塗り」などによる水辺利用の可能性―

  ・漆液の「乾燥」とは,水分の蒸発によるものではなく、ラッカーゼという酵素の働きで,適度な湿度と温度条件のもとで化学的な反応によって硬化すること。漆を乾燥させるためには酵素ラッカーゼの働きを活発にする適当な温度と湿度(2030℃,6580%RH)が必要。

・漆の「乾燥」は「うるしぶろ」と呼ばれる適当な湿度と温度に保たれた環境のなかで行われ、縄文時代にあっても類似の作業環境が必須であることには変わりはない。

・夏の暑い日に湿度を上げるための工夫として沼沢での乾燥作業が検討されねばならない。そのような環境では乾燥させるための基幹施設(例えば、木道や木製構造施設など)が必要になるであろう。

・一方でラッカーゼの働きなしで漆を乾燥させる方法もある。「焼き付け乾燥」と呼ばれ、甲冑などの武具や金属に塗る場合にこの方法が用いられる。漆は高温に熱すると熱によって熱重合を起こすため,ラッカーゼの働きによらないでも硬化する。「焼付け乾燥」は温度を120℃〜150℃にした炉の中で3060分程度で行う。

1-3.【学習と検討】:「見沼文化」の「木胎漆器」と「塗漆土器」―特に「塗漆土器」と開地遺跡出土土器の関係―

  ・昨年のワークショップで解説したように、寿能泥炭層遺跡出土土器の形態には木製容器から転写したと考えられるものが認められており、土器の形態変化に介在する生活様式に着目する研究も面白い。

・学史的には「角底土器」が著名であるが、特に「加曽利B式」では「ソロバン玉」形態の生成に与えた影響について検討すべきであろう。

1-4.【学習と検討】:「みぬまっぷ」No.4のテーマ(案)−「縄文塚」と「縄文沼」を探そう!―

2.【重点研究テーマ】馬場小室山遺跡から展望する縄文時代後晩期の集落と地域(その2)

2-1.【研究と学習】:寿能泥炭層遺跡の理解と展望―木製容器と「塗漆土器」と土器の関係―

・寿能泥炭層遺跡は自然科学分野が中心となった発掘調査である。堀口萬吉氏と話す機会があり、当時の様子を確認できたが、埼玉大学の地質学関係グループの総力戦としてリーダーシップをもって対応した模様。結果として、考古学と地質学関係を統合する視点が必ずしも意識されておらず、今日的な活用が求められている。

・馬場小室山遺跡との関係では、@補完関係としては中期終末から後期初頭の動向、 A「塗漆土器」における比較関係としては「加曽利B式」の動向、 が参考になる。

2-2.【研究と学習】:「加曽利B2式」の形成と「細分布系列」―40kmを中核とした「土器型式」の分布と「細別」―

   ・「加曽利B1-2式」に発達する「半精製土器様式」の分析から、大宮台地における「土器型式」の分布は20kmを濃密地帯とし、更に斑状に範囲を拡大しており、その目安は概ね40km程度と考察される。

   ・このような「細分布系列」における大宮台地の成果を印旛沼周辺に適用すると、「土器型式」の「細別」が明瞭。

・印旛沼周辺におけるこれまでの研究では「加曽利B2式」の定義は『日本先史土器図譜』に則り明快であると同時に、理解が平板となるために今日においても生成過程が説明されたことはない。即ち、印旛沼周辺の「加曽利B2式」は皆同じであるかの先入観に囚われている印象が強いが、実際の資料は何を語っているだろうか。

   ・『日本先史土器図譜』の「分類の標準」を「加曾利B2式遠部系列」と定義しているが、類型構成の極めて強い位相に「安行1式」のような「土器型式」の安定性を見て取れる。しかし、「安行1式」生成には「曽谷式」という不安定な「細分布系列」の状況を経ての安定性であることが重要である。ここが本研究の核心となる。

   ・印旛沼周辺における「加曾利B2式遠部系列」の直前には、印旛沼の南には「吉見台系列」が、北には「西根系列」が展開しており、継起的な両者の融合によって強力な位相を確立したのである。

   以 上

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