2005−11−27(日) 於:三室公民館講座室
参加各位 「馬場小室山遺跡研究会」事務局
「馬場小室山遺跡研究会」第18回ワークショップ
(馬場小室山遺跡における「環堤土塚」の成立と展開を理解するために)
1.はじめに−人類史としての「見沼文化」(9):九州島における種子圧痕研究の最先端情報−
【山崎純男の研究】(2005)「西日本縄文農耕論―種子圧痕と縄文農耕の概要―」『第1回西日本縄文文化研究会 西日本縄文文化の特徴』
◎栽培植物圧痕の研究は山内清男の籾痕以来の実証的研究(コンタミネーションに強い!)として歓迎すべき!
【栽培植物の検出】 <雑草植物の検出> (昆虫類の検出)
熊本県大矢遺跡 (中層:中期) 【イネ(1)】
(上層:後期初頭) 【イネ(1) 】 <不明(3)>
福岡県桑原飛櫛貝塚(後期初頭) 【シソ・エゴマ(1)、イネ?(2)、ゴボウ(1)】 <不明>
鹿児島県柊原貝塚 (後晩期) <ワクド石タイプ(1)> (コクゾウムシ(3))
熊本県太郎迫遺跡 (後期) 【イネ(2)、シソ・ゴマ(1)】 <ワクド石タイプ(3)、イノコヅチ(1)、イネ科(1)、不明(13)>
(晩期) 【イネ(2)】
熊本県石の本遺跡 (後期) 【イネ(4)、ハトムギ(2)】 (コクゾウムシ(2))
(晩期) 【ヒエ(4)、オオムギ(1)、シソ・エゴマ(1)、ゴボウ(1)、マメ類(1)】
<ワクド石タイプ(1)、カジノキ(1)、イノコヅチ(2)、イネ科(7)、不明(23)>
(コクゾウムシ(3)、コナラシギゾウムシorハイイロチョッキリの幼虫)
熊本県ワクド石遺跡 (晩期) 【アワ(1)、シソ・ゴマ(4)】 <不明(1)、ワクド石タイプ(1)>
福岡県周船寺遺跡(13次) (晩期) 【シソ・エゴマ(1)】 <不明>
「縄文農耕は先の圧痕資料にみるごとく、イネ・アワ・ヒエ・オオムギ・ハトムギ等の雑穀栽培であったとみることができる。」
★労働様式の措定は、磨製石斧による焼畑用森林伐採、続く打製石斧による常畑用土掘り具への発展図式。
【馬場小室山遺跡からの視点】
★九州縄文農耕は関東地方のような大遺跡の形成をみない点に大きな特徴とともに発展形態の限界がある。
★関東地方では日暮晃一が栗の管理栽培などに「アグロフォレストリ」概念を適用している程度が現状。
◎中期末から低湿地性遺跡の形成が顕著となり、堀之内2式以降の海退による土地利用と資源管理の多様化
に拍車が掛かり、集落の形態が中期までとは様相を異にしてくる。
漁労活動の最盛期を顕現している貝塚は後期中葉「加曽利B式」に顕著であり、以後衰退する。特に晩期に
なると貝塚は激減し、骨塚の様相を呈し、同期して馬場小室山遺跡等でも石鏃が多量に出土し、狩猟活動の
活発化が顕著となる。
◎このように東日本は気候の変動(寒冷化)による環境変化に機敏に対応して集落が形成される特徴が見られ
るのに対し、九州縄文農耕は寒冷化に伴う対応の一環として、北側の文化、即ち朝鮮半島の労働様式を受容
した可能性が高い。山崎純男が「環玄界灘漁労文化圏」からの発展形態とした指摘は参考にしたい。
しかし、そこで問題となるのはいつもながら中間地帯の近畿・中国地方であり、今後の研究が期待されている。
2.馬場小室山遺跡を中核としたパブリック・アーケオロジー:「考古学実習入門」(14)
【真福寺貝塚・泥炭層遺跡を歩くパブリック・アーケオロジー】◎長野様のナビゲートに多謝!
◎真福寺貝塚・泥炭層遺跡は形状的には曲輪ノ内貝塚と類似した形態であるが、際立った立地上の違いはノッチ
状の部分が面している谷の形態である。真福寺貝塚・泥炭層遺跡は谷頭立地型であり、曲輪ノ内貝塚は谷央立
地型である。
因みに寺野東遺跡は谷頭立地型、雅楽谷遺跡や高井東遺跡は谷央立地型である。泥炭層遺跡の形成は発掘
しなければ結論は出ないが、谷央立地型では陸水の流量変動や流路変動の影響は大きくないことが予想され、
泥炭層遺跡の形成には不向きであろう。従って、雅楽谷遺跡のノッチ状部分の谷から検出された晩期土器群は
泥炭層遺跡の形成ではなく、馬場小室山遺跡の北側斜面の在り方と同様に土器捨て場からの検出と思われる。
◎真福寺貝塚・泥炭層遺跡に立って最初に驚くのは、寺野東遺跡における西側のなだらかな斜面との共通性であ
り、水場における木組み遺構が設営された谷頭への緩斜面の在り方であるが、谷の形態は真福寺の方が深い。
では、問題となる窪地の存在をキチンと確認しよう。東側から南側にかけて環状にめぐる貝塚の南側の林が重要
で、ここが広い窪地である。現在でも30m前後の範囲で明確に残っているのが確認できたものと思われる。
勿論、東側の貝塚部分が窪地から見ると高まっている状況は、全員が体感できたものと思う。
★残念ながら秋季には地表面の貝層が見えないのである。冬季には確認できるので、改めて踏査する機会を設
け、共通認識を形成したいと思う。 以 上
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