馬場小室山遺跡「プロジェクトZero」 第050402号

200514

日本考古学協会会長殿 → 理事 各位

                                                        日本考古学協会会員

                                                            鈴木 正博

「藤村新一事件」も馬場小室山遺跡の破壊も根っこは同じく学問と倫理観の欠如

 

さいたま市馬場小室山遺跡につきましては、埋蔵文化財保護対策委員長から「馬場小室山遺跡の保存に関する要望書」(9月21日 埋文委第16号)、続けて「馬場小室山遺跡の保存に関する再要望書」(10月29日 埋文委第18号)とご尽力賜り、さいたま市在住会員として厚く御礼申し上げます。私どもも全面保存にむけて、地域住民やさいたま市議会議員などと連携し、さいたま市文化財保護課などと折衝し続けておりましたが、残念ながら事態は悪化の一途です。

しかしながら、一筋の光明も現れ、定例市議会における保存要望に対して、遺跡の一部をさいたま市指定文化財史跡とする方向が打ち出され、漸く3月29日付で史跡となりました。これも日本考古学協会としてのご支援があっての朗報であり、厚く御礼申し上げます。

その一方で問題は事態の悪化であります。さいたま市文化財保護課に対しては既に最悪の事態に至らぬように事前防止策を提案しておったのですが、残念ながら馬場小室山遺跡「プロジェクトZero」 第050301号の通り、更には先般の馬場小室山遺跡「プロジェクトZero」 第050401号の通り、馬場小室山遺跡の対応につきましては、日本考古学協会の保存要望に対して、遺跡の破壊の促進に留まらず、新たな遺跡の捏造へと事態を悪化させる施策を展開するに至りました。

本件はさいたま市という一政令指定都市での小さな事件との見方もできますが、問題の本質は今回も複数の日本考古学協会員が積極的に謀った事件であるということです。日本考古学協会員による最近の不祥事につきましては、「藤村新一事件」の教訓が再発防止につながるようにと、正に日本国民の間で期待されているときでありますが、このようなときにまたしても日本考古学協会員が市民の期待を裏切る遺跡の捏造行為支援に及んだことは、大きな衝撃であると同時に日本考古学協会員としては遺憾・痛恨の極みであります。

そこで日本考古学協会にとりましては、馬場小室山遺跡破壊事件の全経緯を踏まえて教訓とすることが社会的責任を遂行する上で特に重要と思量します。その教訓は、学会としてのモラル向上、遺跡捏造の再発防止や業務上あるいは組織防衛上のモラルハザードに対する抑止力、更には考古学の持続性にとり必須であります埋蔵文化財の保護に対する一層の取り組み強化につき、極めて有益であると思量します

つきましては、下記の通り、経緯と問題点などを明記しますので、浄化作用と制度疲労対策が必須との認識に立たれた上で、自由闊達な討議を経、倫理規程や組織風土改革に反映して頂きたく、何卒よろしくお願いします。

 

                       ― 記 ―

 

1.馬場小室山遺跡の破壊をもたらした、日本考古学協会員による「重要遺跡の保護・管理に

関わる包括的捏造業務」の経緯と問題点

 

(1)【遺跡の重要性に対する捏造経緯

浦和市教育委員会が市民向け啓蒙書を一般書籍として流通させ、遺跡保存の重要性を訴求し定着に成功していたにも拘らず、さいたま市になった途端に市民に対してその重要性を捏造し、あたかも重要な遺跡では無いかのようにうそぶいて対応した。実際に市民として被害を受けたのは、地域住民(地元「ばんばおむろやま」のHP参照)とさいたま市議会議員である。特に後者は市議団として破壊されている現地視察で文化財保護課から説明を受けたが、発掘担当者の重要成果説明を、日本考古学協会員でもある役職者が遮り、重要性は特に無いとの説明を行った。参加した市議団のうち代表3名が、あろうことか、逆に私の自宅に本件について陳情に来たという笑えない後日談もあった。以後、遺跡の重要性を訴求してきた市議団のためにも、学術上価値ある考古学の成果に対しては、いつでも、どこでも、誰にでも機会をとらえて説明義務を果してきた。

<日本考古学協会員のとるべき行動基準>

★日本考古学協会員は遺跡の重要性を理解するための向上心を持続すること。

★日本考古学協会員は市民に対して遺跡の重要性を正しく説明すること。

 

(2)【調査見積もりの捏造経緯

2003年の競売において財務省関東財務局が公表した物件調書によれば、さいたま市緑区大字三室字東宿2017-2の地番4,100.46u競売対象面積であった。しかし、何故かさいたま市教育委員会によって調査対象面積3,000uに変更されていた。これが宅地事業者への最初の便宜であり、これがトリガーとなり、遂には宅地造成事業者への見積もり対象面積1,500uにまで捏造し、調査費用の便宜を意図的に宅地造成事業者に与えた。その見返りが何であるかはまだ未調査で不明であるが、事業者へ与えた便宜が原因で、遂行不可能な調査体制で調査を強制実施するとこになったのである。当然、調査できる範囲は、見積もりの通り、4,100uのうち、1,500uでしかないのであり、それ以外は未調査のまま、宅地造成事業の犠牲となるような埋蔵文化財保護に関わる行政指導に至ったと裁断せざるを得まい。公務にも拘らず、特定の事業者に対して便宜を図った可能性も考えられる不正疑惑があるため、教育長宛、市民による業務監査の要望書を提出した。

<日本考古学協会員のとるべき行動基準>

★日本考古学協会員は埋蔵文化財調査にあたり、公正・公平の立場で専門性を発揮すること。

 

(3)【発掘調査内容の捏造経緯

「強制終了」時点では最低でも発掘調査未了範囲が2割(600u)以上残存し、それが誰の目にも明らかであるにも拘らず、宅地造成事業者や教育長に対して文化財保護課は発掘調査完了と捏造の報告を行った。特に9月29日に日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会委員長の視察があり、委員長から「研究者ボランティア」の事務局である私に対して「教育長から回答があり、調査期間が延期になった」との激励を受け、調査現場には一瞬の光明が見えたように安堵感が広がった事実がある。が、翌9月30日には前日の委員長発言ではありようはずも無い「強制終了」の指示が出された。その日には文化財保護課の担当役職者が来跡せず、従って「研究者ボランティア」には何も説明がなく、事実確認が出来ない上に日没後も調査に追われたが、その夜にうちに決着が必要であり、調査が未了である旨の報告書を文化財保護課長宛にFAXし、10月1日の朝一番で担当役職者に「強制終了」の指示を出した事実のみを確認した(保存活動のアーカイブスとしてのHP【http://www.geocities.jp/chibaiseki】参照)。これでお分かりのように、日本考古学協会の委員長が日本考古学協会員である文化財保護課役職者によって手玉に取られ、すごすごと引き揚げて行った事実から判断するならば、さいたま市教育委員会は学会に対しても詭弁を弄して遺跡の破壊を断行したのである。何故、そこまでして調査を捏造し、「残存埋蔵文化財」を破壊したいのであろうか。一番分かり易いのは宅地造成事業者からの見返りとそれに関わる組織防衛であるが、そのためには市民による業務監査が必須である。

<日本考古学協会員のとるべき行動基準>

★日本考古学協会員は埋蔵文化財調査にあたり、品質の向上を目指し、常に保護姿勢を維持すること。

★日本考古学協会員は埋蔵文化財調査にあたり、外部監査に耐えられる職業専門性を維持すること。

★日本考古学協会員は埋蔵文化財調査にあたり、現地説明会を含む情報公開を促進すること。

 

(4)【未然防止の要望書、及び三回にわたる文書と証拠写真による工事中の「発見届け」を無視し、不法・不当・不正

に行われた「遺跡の捏造」経緯

未調査部分の大量の「残存埋蔵文化財」を見て見ぬふりをし、見沼たんぼに投棄させ、「馬場小室山第2遺跡」の出現を促した上に、その程度は常識と市民に明言し、埋蔵文化財の管理を名目・実質共に放棄した(保存活動のアーカイブスとしてのHP【http://www.geocities.jp/chibaiseki】参照)。何故、馬場小室山遺跡の「残存埋蔵文化財」を救済するのではなく、調査後にはそこまで徹底的に事実を隠滅したいのであろうか。

<日本考古学協会員のとるべき行動基準>

★日本考古学協会員は埋蔵文化財の管理に当たり、職業専門性を発揮し、社会的責任を全うすること。

 

(5)【宅地購入者に対する「残存埋蔵文化財」捏造説明誘発経緯

「強制終了」後に私が直接提出し、保護を求めた三回にわたる文書と証拠写真による工事中の「発見届け」を全く無視し、所謂「環状盛土遺構」の頂部において「残存埋蔵文化財」(「塚状堆積」は約2m)が未調査のままで、表面50cmが削平されただけの重要遺構の中心部(「埋蔵文化財包蔵地」)であるにも拘らず、宅地造成事業者へはその旨周知徹底しなかった。その部分はひな壇造成で現代の盛土により原位置で埋蔵されており、土地開発にかかわる上流で「発掘調査内容の捏造」が行われると、当然下流にまでその影響が及び、「宅建業法」における取引業としての「残存埋蔵文化財」説明義務に問題が発展し、その結果、最終的に被害を被るのは宅地購入者としての市民である。埋蔵文化財の保護を担当する者は、開発工事が完了するまでは「行政の責任」であることを強く認識し、市民に対して下流で被害を与えぬ倫理観を深く再認識し、職業専門性を発揮すべきである。

<日本考古学協会員のとるべき行動基準>

★日本考古学協会員は埋蔵文化財の保護を通して、市民と地域社会に貢献すること。

 

馬場小室山遺跡の保存・活用を支援する参考ホームページ

「藤村新一事件」を契機として行動の透明性を高めるため、情報公開を徹底するとともに良識ある市民感覚を市政に反映させる方針とした。

   ・鈴木正博がさいたま市教育委員会などと展開した保存運動経過の情報公開用アーカイブスとしてのHP :

 【http://www.geocities.jp/chibaiseki

   ・地元における競売問題から継続活動している元祖保存運動「ばんばおむろやま」のHP :

 【http://www.omuroyama.info

   ・馬場小室山遺跡の重要性を体感し、その感動を歴史に学ぶ市民感覚で伝えるHP :

http://homepage1.nifty.com/sawarabi

先史/歴史に対する情熱と行動力には脱帽!

 

2.馬場小室山遺跡の破壊をもたらした、日本考古学協会員による「重要遺跡の保護・管理に

関わる包括的捏造業務」への現時点における雑感(ご参考)

 

以上、大きく5点に絞られる「重要遺跡の保護・管理に関わる包括的捏造業務」を組織的に平然と行い、更には市民等にとって一番の関心事である現地説明会という情報公開を正式に要望してもひたすら拒み続け、組織内隠蔽体質を徹底させたのは、さいたま市として合併効果を相乗的に創出すべき施策とは正に裏腹の、埋蔵文化財保護行政における弱体化(「行政の不作為」と「行政の怠慢」姿勢強化)の証明であり、21世紀の埋蔵文化財保護行政が実に昭和30年代の対応にまで後戻りしてしまったのである。その原因を究明し、再発防止策を徹底するには、さいたま市教育委員会の機構改革と職業専門性の再教育が必須である。

これに対して定例市議会で追及されたさいたま市教育委員会は、教育長による公の席での答弁による限り、馬場小室山遺跡に対する「行政の責任」という認識は微塵も無く、この結果、文化財保護課係長級以上役職者全員による不法・不当・不正としか表現し得ない業務推進により、「日本考古学協会員に職業的専門性に対する倫理観無し!」と日本国中から断罪されても弁解の余地の無いほど、最終的には遺跡の破壊にとどまらず、衝撃的な「遺跡の捏造」事件にまで発展してしまったのである。

それにしても悔やまれてならないのは、国有地であった馬場小室山遺跡を政令指定都市になったさいたま市教育委員会は不要と判断し、国としては止む無くさいたま市による埋蔵文化財包蔵地の有効活用を断念し、民間の宅地造成事業者に手放さざるを得なかった経緯である。旧地権者と浦和市教育委員会との関係を反故にした経緯も加わって、馬場小室山遺跡が所在する三室地区の住民は結束して保存活動を進め、5,500名の署名活動にまで結実したが、当時のさいたま市教育委員会は遺跡の重要性を平然と捏造し、浦和市教育委員会の保存措置を決して認めようとはしなかったのである。この経緯も地元の飯塚邦明氏が「ばんばおむろやま」という以下のホームページで公表しているので、是非とも参照頂きたい。文化財保護課の職員が市民に嘘をついている様子が情けないくらいに露骨で、その記録を読んで唖然とした。問題はその職員に罪の意識が全くなかったことであり、馬場小室山遺跡の問題は氷山の一角に過ぎないのではないか、という疑惑が新たに生じてきたのである。

以後、私にとってさいたま市教育委員会文化財保護課のあるべき業務への支援策は、第一に「市民不在」に徹した埋蔵文化財破壊業務に対しての、市民による監視強化の促進であり、第二に「倫理観不在」と「情熱不在」による職業的専門性欠如に対する再教育対象として、埋蔵文化財の重要性認識と保護に向けての飽くなき努力意義を、理念と情熱を土台とした実践を通して教えてきたこと、の二点に尽きた。将来のある若者ならまだしも、中高年では意識改革が困難な上、過去の成功体験に縛られた古い価値観を捨てられずにおり、極めて面倒で気の遠くなるような埋蔵文化財保護行政への支援活動ではあるが、さいたま市の埋蔵文化財保護行政の恥がこれ以上拡大することを恐れ、市民として労は惜しまない活動を9/16から日々実践してきたのである。

さて、このような不幸な状況と対峙したときに、一市民である私が教育・啓蒙ボランティア活動以外でできる総括的かつ将来に向けて持続性のある対応は、現代史として馬場小室山遺跡の不当破壊を後世に語り継ぐことである。それは即ち、馬場小室山遺跡の先史学的重要性を訴求してきたさいたま市在住日本考古学協会員の使命である、との強い意志と誇りを持つことでもあった。そこに至るまでには、「研究者ボランティア」としての呼びかけに応じ、発掘調査現場にて種々ご支援頂いた方々、及び保存運動に進展した際に「学術ボランティア」としてご援助頂いた方々からの、知的かつ精神的援助が拠り所となっており、「強制終了」後における「馬場小室山遺跡研究会」の立ち上げに繋がったのである。馬場小室山遺跡の緑と歴史を大切にしている地域住民に成り代わり、深甚なる謝意を表したいと思う。

以 上

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