2004年9月16日
さいたま市教育委員会 文化財保護課長 様
日本考古学協会会員
鈴木 正博
馬場小室山遺跡の調査に関する要望書
馬場小室山遺跡は、旧浦和市が以前国指定史跡化を企図した経緯のある、極めて重要かつ周知の縄文時代の遺跡
であり、その出土品は学術的に価値が高く、多くの研究者によって分析が進められております。
それ故に現在発掘調査が進められております馬場小室山遺跡への関心は極めて高く、既に明治大学考古学研究室や早稲田大学考古学研究室の教官や大学院の学生、あるいは類似の国指定史跡を調査した栃木県や佐倉市の担当者も見学を希望され、見学後にはその学術価値の高さに感嘆し、今後の推移を見守っております。
昨日(9/15)、再度明治大学考古学研究室の教官や学生と見学し、現時点の調査の進展状況と今後の予定を確認し得ましたが、現状の少人数による調査体制では残念ながら記録保存が部分的となってしまうものと思われます。
そこで困難な状況と推察されますが、馬場小室山遺跡の文化遺産価値と直面している事態の緊急性をご認識・ご賢察頂き、是非とも文化財保護行政の本務から発掘調査体制の正常化にむけ、強力なご指導とご支援を即座に賜りたく、下記の通り要望します。併せて緊急性に鑑み、書面にて即日ご回答を頂きたく、何卒よろしくお願いします。
−記−
1.
馬場小室山遺跡が「環状盛土遺構」の代表例であり、国指定史跡である千葉県佐倉市井野長割遺跡や栃木県小
山市寺野東遺跡に匹敵する歴史的・文化的価値を有していることを理解し、それに応じた文化財行政指導を速
やかに行うこと。少なくとも今回の調査区においては未発掘の場所や層を残さないように指導すること。
2.
馬場小室山遺跡の「環状盛土遺構」は、縄文時代中期の住居を埋めて縄文時代後期前葉の住居を作り、次には
縄文時代後期中葉の住居へ、更には後期後葉の住居へ、加えて縄文時代晩期へも連綿と継続しており、層位的
に縄文時代中期から晩期中葉に至ることが判明した、稀有な遺跡であることを理解していますか。
このような状況が検出された発掘調査例は馬場小室山遺跡が本邦初であり、井野長割遺跡や寺野東遺跡でも確
認されておらず、その文化財的価値を正しく理解し、それに応じた文化財行政指導を速やかに行うこと。
3.
馬場小室山遺跡の「環状盛土遺構」調査成果は本邦初の貴重かつ重要なものであり、宅地として破壊される前
にその学術的価値を有識者で適正に検討し、さいたま市における文化遺産の歴史的・文化的価値を遺構消滅前
に地域住民や市民に対して速やかに情報公開すること。
4.
馬場小室山遺跡の発掘調査は、既に記したようにその成果に至るまでにはこれまでの調査経験では推し量るこ
とが出来ない、学術的に極めて難解な状況であることを理解していますか。
このような本邦初の状況が発見されたときには、その時点で調査体制の適正化を迅速に行い、より上位の組織
や学会、あるいは経験豊富な有識者と連繋し、調査体制の万全化を図り、さいたま市の文化遺産を広く、かつ
後世に正確に伝える努力を可能な限り行うこと。
5.
馬場小室山遺跡のように事前の見積もりが困難な遺跡の場合には、発掘調査への予算配分を最優先し、発掘成果の情報公開を徹底し、事後の対応には改めて記録保存の貫徹にむけての文化財行政指導を速やかに行うこと。
6.
原因者側の負担にも限界があり、それ故に困難な調査も想定される。しかし、馬場小室山遺跡は国民の共有財産という観点からも支援が必須の重要遺跡であり、今回のケースは限界を打破すべく市民ボランティアが有効に思え、市役所を挙げてのボランティア体制を確立すべきである。我々も可能な限り協力を惜しまないので、さいたま市職員の文化遺産再認識の場として可能な限り、馬場小室山遺跡の記録保存に向けて努力すること。
以 上
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